知ることさえ許されない異世界を、掟破りの蒐集家たちが駆ける
勢いで突っ走る少々頼りないリーダー・富岡椛が率いる蒐集団体「早二野」が、様々な思いを抱える蒐集家たちに立ち向かう。時には敵だと見ていた彼らの心を知った時、「早二野」はそれでも譲れないものに気付いていく。そして世界を越えて動く蒐集家たちに待つものとは。
登場人物紹介(クリックすると紹介ページへ飛びます)
蒐集家、団結する
世界を越えた先に、楽園はある
昔に自分の宝物を取り返してくれた「蒐集家」を名乗る「天使」に憧れ、富岡椛は盗品を元の持ち主へ返すことを繰り返していた。ある日、友人の屋久島真木と共に蒐集をしていた椛は、窮地を蒐集家である端治に救われる。彼に異世界を含めた各地で美術品を盗んでいる「楽土蒐集会」の存在を聞いた椛は、新たに加わった仲間と共に蒐集団体「早二野」を結成する。しかしやがて「楽土蒐集会」が、ある切実な願いのために動いていると知る。
舞台設定 2020年10月~12月
全3章
第1章
富岡椛とその友人・屋久島真木は、潜入した先から逃げていたところを端治に助けられる。彼の話す「蒐集家」の実態は、椛が夢見ていたものとは全く異なっていた。異世界からやって来て貴重な美術品を奪う「楽土蒐集会」に憤慨した椛は、新たな蒐集家たちとの関わりを経てある決心に至る。
第2章
意気込んで設立された蒐集団体「早二野」だったが、肝心の相手である「楽土蒐集会」にはほとんど動きが見られなかった。会長・熊野仁成との対峙や小料理屋「七分咲き」で出会った謎の老人・日光春宣とのやり取りから、椛たちは「楽土蒐集会」の目的とその本拠地である異世界の国家・ライニアの悲劇を知る。一方、「楽土蒐集会」副会長の平泉尊は自らの行いに悩み、やがて思い切った動きへ踏み出すことになる。
第3章
「楽土蒐集会」を挫くべく、椛たちはライニアへ赴く。盗まれたものが並ぶ博物館で、蒐集家たちは己の信念をぶつけていく。しかし「楽園」の完成は間近に迫っていた。その完成へ至るためだとして、椛は「天使」に返された宝物を再び奪われてしまう。絶望に叩き付けられるのも束の間、「楽園」は思わぬ方向へ向かっていく。
蒐集家、久遠に出会う
その「人類」は、救いか脅威か
馴染みの小料理屋「七分咲き」に集まっていた蒐集団体「早二野」のもとに、謎の荷物が届く。中に収まっていたのは科学の発展した異世界を発祥とした高度な知能を持つ人造人間・久遠の刑部姫だった。その出会いを皮切りに、富岡椛たちは久遠に関わる騒動に巻き込まれていく。ある男は亡くなった恩師・二条元家を久遠として復活させようとし、別の男はそれを阻止すべく「早二野」に依頼をする。やがて久遠の二条が起動を始め、椛は意見の違う二人を和解させるべく奔走していく。
舞台設定 2020年12月~2021年2月
全3章
第1章
「楽土蒐集会」の騒動を解決し、いつものように懇意の小料理屋「七分咲き」で過ごしていた椛たちのもとに、謎の荷物が届く。その中身は刑部姫と名乗る、科学の発達した世界で生み出された人工知能を備えた人造人間・久遠だった。刑部姫に新たな異世界の話を聞いて数日後、久遠の製造と研究をする組織に属する彦根直から、「早二野」は完成前の久遠を蒐集するよう頼まれる。それはかつての同僚・姫路好古が製造している二条元家――彦根が恩師とも慕う人を模した久遠だった。
第2章
久遠の二条を蒐集することに失敗した椛たちは、彦根の働いている「久遠研究所」へ行き、かつて生きていた二条元家の話を聞く。彦根と姫路の両方に二条への思いがあると感じた椛は、二人を和解させることを思い付く。しかし「七分咲き」で行われた話し合いはなかなか上手くいかない。手応えを感じられない椛のもとに、二条の久遠が現れる。姫路の記憶とは違う個性を現していた久遠に、椛はある提案をする。
第3章
行方をくらました二条の久遠を探す彦根は、「久遠研究所」所長の深志百花に呼び出される。そこで思わぬ事実を知った彦根の心に暗雲が立ち込め、久遠への暗い思いが増していく。そのころ椛は、二条を自分が営む雑貨屋の店員として雇う中で、その中にあるこだわりを解きほぐしていく。いつまでも続くかと思えたその日々は、突然の速報によって打ち破られる。