六段の調べ

歴史に埋もれた国を巡る、現代異国交流ファンタジー

高校に入学したばかりの平井清隆ひらいきよたかは、学校帰りに追われて負傷した女・シャシャテンを助ける。居候となった彼女の故国・瑞香ずいこうは、かつて日本と交流があった不死鳥の住む国だという。疑いを持ちつつ瑞香と関わるようになった清隆は、やがて隠された陰謀を知ることになる。

全三部構成、各六章。

舞台:2013年4月~2016年3月 日本・瑞香

登場人物紹介(クリックで他ページに飛びます)

序 初段

平井清隆は高校に初めて登校した帰り、何者かに追われている女・シャシャテンを助ける。彼女が居候することに戸惑いつつ、清隆はその故国である瑞香に興味を持つようになる。そんな中、思いがけずしてシャシャテンの正体が明らかになる。

序 二段

シャシャテンの求める三種の神器が一つ『芽生書めばえのしょ』を手に入れるため、清隆は持ち主である北道雄きたみちおのもとへ向かう。世間に称賛されながら自らを卑下する北の姿に、清隆は己と重ねていく。そして無事に『芽生書』が瑞香へ送られたものの、新たに事件が発生する。北との再会、騒動を経て、清隆は自らを見つめ直していく。

序 三段

奪われた『芽生書』を追い、清隆はついに瑞香を訪れる。無事に『芽生書』を取り戻しかけたところにシャシャテンが捕らえられ、書も再び奪われてしまう。それぞれを救おうとした清隆の目に、次々と予期せぬものが飛び込んでくる。

序 四段

清隆の暮らす日本で、不可解な事件が起き始める。これが瑞香人の手によるものか、清隆は警戒と疑問を抱き、真実を探ろうとする。一方、清隆の妹である美央みおは、シャシャテンとも因縁の深い者と接近していた。人に興味がないと思っていた彼女は、変わりゆく自らの心に戸惑っていく。

序 五段

ひょんなことから、清隆は『芽生書』と似た場面が描かれた絵本を見つける。それはかつて瑞香に住んでいた歴史家の一族・朝重あさしげ家の者が作ったものだった。朝重家の持つ歴史資料を求める元女王の四辻姫よつつじひめを訝りながら、清隆は残された娘・朝重れいへ会いに行く。しかし異変を抱えた彼女は、突如として清隆に襲い掛かり、思わぬ言葉を告げてくる。

序 六段

現瑞香王・大友正衡おおともまさひらに目を付けられた清隆は、彼からの刺客を警戒していた。そんな時、予期せぬ報告が耳に入り、清隆は呆然とする。新たな疑念も浮かぶ中、シャシャテンが瑞香に連れて行かれる。それは瑞香が「春」を迎える前触れに過ぎなかった。

破 初段

シャシャテンの懸想人である山住城秀やまずみしろひでが平井家に来る。彼が告げたのは、四辻姫が再び女王となった瑞香の新たな危機だった。そして日が経ち、清隆はある理由から山住の問題解決を頼まれる。赴いた瑞香で会ったのは、思いも寄らぬ少女だった。

破 二段

清隆は「先輩」の八重崎小町やえざきこまちから、瑞香にまつわるかもしれない書を預かる。シャシャテンに「解読」してもらったそれには、長く伝えられてきた瑞香の禁忌が記されていた。やがて貴重なその書を狙い、八重崎に危険が迫る。

破 三段

山住に伴われ、清隆は瑞香で広まる宗教・梧桐宗ごとうしゅうの儀礼を見に諸田寺しょでんじへ行くことになる。同じころ、箏教室の勧誘を受けた生田信いくたまことも諸田寺へ向かおうとしていた。突然の騒ぎを経て、梧桐宗と敵対しているという者の恐ろしさを清隆は知る。

破 四段

電車から転落した北を見舞った先で、清隆は四辻姫と相対したヴァイオリニスト・倉橋輪くらはしりんと会う。倉橋の父が書いた手記が盗まれたのを取り戻すべく、清隆はシャシャテンに協力することになる。だが辿り着いた先で聞いたのは、シャシャテンも驚く「事実」だった。

破 五段

突如、シャシャテンに四辻姫から正体不明の太刀が届く。そして瑞香から消えたはずの不死鳥が、日本に現れた。不死鳥によってシャシャテンが託された太刀の真実が明かされる中、梧桐宗が宿願へ動きだそうとしていた。

破 六段

雨上がりの瑞香へ、清隆たちは梧桐宗の悲願を阻むべく向かう。不老不死を求める賢順、「人でなし」を願う妹を止めようとする清隆は、やがて惨劇を目の当たりにする。さらに賢順から予期せぬ糾弾を受け、清隆の心は揺らいでいく。

急 初段

妙音院師長みょうおんいんもろながという男から謎の連絡が届いた矢先、信が瑞香にさらわれる。彼を救いに妙音院邸へ向かった清隆は、生田家と瑞香の意外な関わりを知る。そして信にもまつわる四辻姫の動きを止めるために御所へ向かうが、女王は今までにない様を露わにする。

急 二段

勉強の息抜きにと誘われ、清隆は瑞香の都で行われる建国祭に足を運ぶ。過去に起きた出来事に思いを馳せ、清隆は再び苦い心に囚われる。その後、四辻姫が姿を見せる参賀に行くが、そこでは衝撃の光景が待っていた。

急 三段

瑞香の御所で働いていた朝重が退職した。彼女の行動を訝しんだ清隆は瑞香へ向かうが、そこで物忌みをしていた妙音院が失踪したと知る。やがて見つけたのは、真実を知るために妙音院を脅す朝重の姿だった。

急 四段

朝重の一件に加え、今までとは変わった八重崎の様子を清隆は思い悩む。そんな清隆の周りで、人々が眠りに落ちていく。原因である呪いを解こうとする清隆は、瑞香に対する自分の思いを確かめる。さらにもう一つ、目を逸らしていた本心とも向き合うことになる。

急 五段

「人」と「人でなし」の違い、そして興味がないはずの人間への思いに、美央は悩んでいた。そして何気なくシャシャテンの頼みに応えて同行した瑞香で、あらぬ疑いを掛けられる。捕らえられて時を過ごす美央は、自分なりの「人とは何か」を考えていく。そして彼女を救おうとした妙音院の口から、驚きの事実が明かされる。

急 六段

シャシャテンが挙げる結婚式のため、清隆は余興の練習に追われていた。そこに倉橋から、四辻姫の思惑とそれを止める計画を聞かされる。最善を求めて力を尽くす清隆だったが、シャシャテンが衣装合わせを行った日に悲劇は起きる。隠されていた四辻姫、そしてシャシャテンの思いに、清隆は動かされていく。